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東京地方裁判所 平成6年(ワ)3791号 判決 1995年11月22日

原告

清水明

清水久美

右二名訴訟代理人弁護士

片岡義貴

右訴訟復代理人弁護士

徳岡宏一朗

被告

中尾雅則

中尾弘二

右二名訴訟代理人弁護士

伊藤安兼

右訴訟復代理人弁護士

小野寺信次

主文

一  被告中尾雅則は、原告清水明に対し三五万八四六五円、同清水久美に対し七万一五五三円及びこれらの各金員に対する平成四年八月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らの被告中尾弘二に対する請求及び被告中尾雅則に対するその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その三を被告中尾雅則の、その余を原告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

被告らは、原告清水明に対し一二四万〇二五八円、同清水久美に対し一二万三二三八円及びこれらの各金員に対する平成四年八月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  争いのない事実

1  事故の発生

(一) 日時 平成四年八月二日午後二時一五分ころ

(二) 場所 千葉県市原市姉崎二一一人番地の三先路上

(三) 加害車 被告中尾雅則(以下「被告雅則」という。)が運転する普通乗用自動車

(四) 被害車 原告清水久美(以下「原告久美」という。)が運転し、原告清水明(以下「原告明」という。)が同乗する普通乗用自動車

(五) 事故態様 被害車が、道路左側レストランに進入するため合図して道路左側に停車していたところ、加害車が後方から被害車の後部に追突した(以下「本件事故」という。)

2  被告雅則の過失責任

本件事故は、被告雅則の前方不注視又は安全運転義務解怠に起因するものである。

3  被告らの身分関係

被告弘二は、被告雅則の親権者である。

4  損害の填補

原告らは、被告らから、原告明が一七万四三四〇円、原告久美が一万五一六〇円を受領している。

二  争点

1  被告中尾弘二の責任

(一) 原告らの主張

(1) 被告中尾弘二(以下「被告弘二」という。)は、被告雅則の運転技術が未熟であること、他人所有の車両を運転していること等を十分知り又は知り得たにもかかわらず、被告雅則に対する監督を怠ったために本件事故が発生したのだから、不法行為責任を負う。

(2) 被告弘二は、原告らに対し、被告雅則の損害賠償債務について支払保証する旨約した。

(二) 被告弘二の認否

(1)は争い、(2)は否認する。

2  原告らの損害<省略>

第三  争点に対する判断

一  争点1(被告弘二の責任)について

1  争点1(一)について

本件事故における被告弘二の不法行為責任を肯定するためには、被告雅則が責任能力を有する以上(当裁判所には顕著な事実である。)、被告弘二が、被告雅則に交通事故を発生させる具体的危険性があるにもかかわらず親権者としてこれを制止する等の措置を怠り、その結果本件事故が発生したことが必要である。

原告らは、この点について、被告雅則の運転が未熟であること、他人所有車両を運転することを主張するが、前者については、仮に被告雅則の運転技術が未熟であり、かつ親権者たる被告弘二がこれを認識していたとしても、被告弘二が、運転免許を有する被告雅則の運転を制止すべき監督上の義務があるとは直ちにいえないし、被告弘二に被告雅則の交通事故発生につき具体的な予見可能性があったと認めるに足りる証拠もないこと、後者についても、被告雅則が運転する車両の所有権の帰属と交通事故の発生とは全く別個の問題であり、本件事故との相当因果関係を認められないことから、原告らの主張はいずれも採用することはできない。

2  争点1(二)について

甲二四、原告明本人尋問によれば、本件事故後、被告弘二が同雅則とともに原告らに対して謝罪をしたことが認められるが、父親たる被告弘二が被告雅則の惹起した交通事故における損害賠償責任について支払を保証することまで約束したと認めるに足りる証拠はなく、原告らの主張には理由がない。

二  争点2(原告らの損害)について

1  原告明の損害

(一) 治療費 二〇万〇五四五円

甲七、八の1、2、九、一八の1ないし5によれば、治療費として原告明が治療費として支出した金額は二〇万〇五四五円を下回らないことが認められる。

(二) 通院交通費 三二二〇円

甲一〇によれば、原告明が通院交通費として支出した金額は三二二〇円を下回らないことが認められる。

(三) 休業損害 三万九〇四〇円

甲一二によれば、原告明は、本件事故により八月一二日から一四日まで休業を余儀なくされたこと、そのため、二万七〇四〇円の減給と一日当たり二万円程度の賞与減額がなされたことが認められるから、原告が本件事故によって被った休業損害は、原告の請求に係る三万九〇四〇円を下回らないことが認められる。

(四) 逸失利益 〇円

原告明本人尋問によれば、本件事故によって賃金が減給されたのは、前記休業損害に係る金額のみであること、この後、原告明は休業損害に係る金額以外に給与面で少なく査定されたことがなく、通常の給与が支給されていたことが認められる。以上の事実を総合すると、本件事故によって、就労の対価である原告明の賃金収入は、前記休業損害に係る金額を超えては現実に減少していないのであるから逸失利益を認めることはできない。

なお、原告明本人尋問によれば、本件事故後も行っていた営業や事務の仕事を遂行する際に首の後ろや頭痛のために少なからず苦労があったことが推認できるから、この点については、後記のとおり、慰謝料の斟酌事由として勘案する。

(五) 慰謝料 二五万円

原告明の負傷部位や程度、通院期間や通院実日数のほか、前記のとおり、治療期間経過後も体調が万全でない状況で仕事等を遂行するために努力していたこと、その他弁論に顕れた諸事情を斟酌し、慰謝料(後遺症慰謝料を含む)として二五万円をもって相当と認める。

(六) 小計 四九万二八〇五円

(七) 損害の填補

一七万四三四〇円

(八) 小計 三一万八四六五円

(九) 弁護士費用 四万円

本件訴訟において損害として認めるべき相当な弁護士費用として、四万円を認める。

(一〇) 合計 三五万八四六五円

2  原告久美の損害

(一) 治療費 三万二六八〇円

甲一四、二〇の1ないし5により認める。

(二) 通院交通費 一〇二〇円

甲一五により認める。

(三) 休業損害 二万三〇一三円

原告久美は、本件事故日である平成四年八月二日から同月八日まで家事に従事できなかった旨主張するが、右期間中における原告久美の具体的容体が明らかでない上、医師から安静を命ぜられる等医学的観点から就労不能な状況にあったことを認めるに足りる証拠がなく、原告久美の主張には理由がない。

しかしながら、甲一三によれば、原告久美は八月四日から同月一八日までの期間中三日間通院したことが認められ、右通院日については少なくとも通院のために家事が十分できなかったことが推認されるから、三日間についてのみ休業期間と評価するのが相当である。

また、休業損害を算定するための基礎収入については、平成四年女子学歴計全年齢平均年収である三〇九万三〇〇〇円を上回らない、原告久美主張に係る年収二八〇万円をもって算定することが相当である。

すると、以下のとおり、二万三〇一三円となる。

二八〇万円÷三六五×三=二万三〇一三円

(四) 慰謝料 二万円

原告久美の負傷部位、程度、通院期間と通院実日数を勘案すれば、慰謝料として二万円をもって相当と認める。

(五) 小計 七万六七一三円

(六) 損害の填補一万五一六〇円

(七) 小計 六万一五五三円

(八) 弁護士費用 一万円

本件訴訟において損害として認めるべき相当な弁護士費用として、一万円を認める。

(九) 合計 七万一五五三円

三  結論

以上により、原告らの被告雅則に対する損害賠償請求額は、原告明が三五万八四六五円、原告久美が七万一五五三円となる。

(裁判官渡邉和義)

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